Ableton Meetup Tokyo Vol.57 【低音の音作り、どうしてる?】レポートブログ『Bassの役割って何?』編

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AbletonMeetupTokyo

音作りのノウハウや曲を生み出すためのインスピレーションなんかも大事ですが、曲を完成形に持っていく手順も大事ですよね。
そんな流れで前回は【ミックスダウン】に焦点をあてた回でしたが、今回は【低音の処理】に焦点を当てています。

この記事を書いているakimはベース弾きの端くれなので、低音の処理には興味津々なわけで。

Ableton Meetup Tokyoとは【Abletonユーザーを横断するコミュニティーの構築】を目的に隔月で開催されているイベント。
簡単に言うなら【Ableton Liveユーザー同士、仲良くなろうよ】と言う趣旨・・・ではあるものの、イベントの面白さが噂になったのかAbleton Live以外のDAWユーザーが参加することもよくある話。
オーガナイザーのKOYASさん曰く【大人の部活動】。
ちなみに、このレポを書いてる僕(akim)も2018年にAbleton Certified Trainerになりました。

『Ableton Meetup Tokyo(略称 AMT)って、いったいなんなの??』という方、まずは過去のAMTレポートをお読みください。
Ableton Liveユーザーのみならず、音楽制作に関わっているのであれば興味出ること間違いなし。

Ableton Live講座動画のアプリ作りました。

前置き

Ableton?

今までのAbleton Meetup Tokyoもお読みいただくとして、まずは基礎知識。

Ableton】とは【Live】というDAW(音楽制作ソフト)を作っているメーカーです。
直感的な操作が可能で楽器のように扱うことも出来るので、世界中のTrack makerやDJ/パフォーマーなどに愛用されてます。
その中でも、Abletonに知識・技能を認められた方々をAbleton Certified Trainer(Ableton認定トレーナー)と呼びます(自分で言うの、ちょっと恥ずかしいけどw)。

Ableton Meetup Tokyo

Ableton Meetup Tokyo(略称AMT)とは

が共同オーガナイズしているイベントです。

イベントの目的はAbletonユーザーを横断するコミュニティーの構築です。
簡単に言うと【Abletonユーザー同士、友達になろうよ】的な。
公式サイト公式Facebookページもチェック!

【低音の音作り、どうしてる?】のご紹介

2024年4月12日に六本木CUBEで行われた【Ableton Meetup Tokyo Vol.57】。
(Ableton Meetup Tokyoー略称:AMT)

今回は【低音の音作り、どうしてる?】がメインテーマです。
前回の【ミックスダウン】に引き続き、制作の内側に焦点を当てた回ですね。
たしかに、低音の処理ってジャンルや出したい音にもよるとは言え、難しさを感じる箇所ですよね。

ちなみに『サウンドチェック時に新曲をかけて、低音がちゃんと鳴ってるかを確認するのがクラブあるある』とは、KOYASさんの弁。
重要な要素だからこそ、ぶっつけ本番というわけにはいかないわけで。

ってことで、今回の登壇者やDJ、Touch&Try、司会のご紹介から。
紹介は登壇順、またはDJの出番順です。

なお、リンクはご本人が紹介したもののほかに、『ここを見れば情報を得られるかな?』というakimのおせっかいで貼ったものもあります。

登壇者

Nobuharu Morimoto / ノブハル・モリモト

Tsuyoshi Okamoto / 岡本剛

RISA TANIGUCHI (CLR/Second State)

DJ

ALLY

幼少期には吹奏楽の経験が有りクラシックを聞き育つ。

UK、US在住時にアングラCLUBカルチャーにのめり込み、TECHNO・HOUSEのDJキャリアが始まった。USではTBA Blooklynに足繁く通い、今のDJ音楽ツールの基盤となっている。

WOMB・VENT・ENTERなど都内でのプレイを経てレギュラーパーティCORMを始動。

手から飛び出す繊細さと破壊力を兼ね備えた着実なテクノセットを繰り広げる。

Techno・Minimal・Acid等をプレイする。

YAI

東京を拠点とするフィメールDJ。

2022年にDJを始め、わずか半年の間にCircus TokyoやWALL&WALLのメインフロア、Contactなど都内の主要クラブに出演。Technoを軸としながら、Hard Dance、Breakbeats 、Dubtechno、minimalなどを独自のセンスで織り交ぜ、狂気を帯びつつエモーショナルに展開する。

2023年にはベルリンのアンダーグラウンドテクノパーティSynthesisに出演し、海外リスナーにも評価されるプレイスタイルで活動の幅を広げている。

Touch & Try

毎回…というわけではないんですが【Touch & Try】という名前のコーナーがあります。
文字通り、何らかの機材に触れるコーナーなんですが、今回はLive 12を設置。
しかも、横にはAbleton認定トレーナーの齊藤義典さんも控えていたので、質問し放題。

あ、手が空いてる時間には僕もウロチョロしておりました。

Live 12の新機能 | Ableton
Ableton Live 12の新機能、デバイス、サウンド、 ワークフローのアップデートをチェック。

司会

今回の司会はAMTのオーガナイザーであるKOYASとCD HATAです。
安定のコンビネーション。


Nobuharu Morimoto / ノブハル・モリモト 「TECHNOのKickはこう作る」

1人目の登壇者は【ノブハル・モリモト】さん。
YouTubeチャンネルの【モリモトミュージック】にお世話になってる方も多いはず。

僕は今回のAMTをキッカケにモリモトミュージックを知ったんですが、速攻でチャンネル登録しました。
知らないことを知れるのは、とても楽しいですからね。

話が脇道に逸れました。
Ableton Liveを入れたPC1台でプレゼン開始です。

ノブハル・モリモトは、テクノ・ミュージックのDJおよびプロデューサー。

これまでにSay What?、CMND CTRL、TUTUなどからリリースしたEPに収録されているトラックが多くのDJに高く評価されている。

また、DJではテクノを軸にデトロイト・テクノやゲトー・テクノを取り入れたFunkなグルーヴを得意とする。

ゆっくりではあるが確実に現在のテクノ・シーンで評価を高めている。

アイデア次第

前提としてモリモトさんが言葉にしたのは『アイデアさえあれば作れる』ということ。
今回であれば【Kick】についてですが、サードパーティ製のプラグインやインストゥルメントに頼らずとも、Live純正のエフェクトやインストゥルメントで満足いく音が作れるということですね。

実際、モリモトさんがリリースした曲のKickも、Live純正のデバイスだけで作ることがあるそうです。

Kickの役割

そもそも【Kickは『作る』と言うより『デザインしていく』イメージ】とはモリモトさんの弁。

『単なる言葉遊びじゃない?』と捉えるのは早計。
「作る」と「デザイン」は似て非なるものです。
『そうかな?よくわからないけど??』という方も、まずは心構えを【デザイン】に置き換えてみましょう。
きっと、何かが変わりますよ。

さて、Kickの役割についてですが、モリモトさんは【ビートを感じさせて踊りやすくさせる】音と捉えています。
さらに【Mixの中心になるものがKick】とも。

結果として

  • 迫力ある音は、フロアをドライブさせる
  • 曲の感情や表情を表せるもの

という効果が付随してくる感じ。

Kickをデザインする

実際にKickをデザインする話にいきましょう。
解説のためにLiveの画面を使いますが、akimの画面をキャプチャしたものもあります。
【akiMusic】のロゴが入っていたら『あ、これはakimのだな』と思ってください。

さて、モリモトさんは【Kick 909 1】を選びました。
それを【レイヤー】させていきます。

レイヤーとは複数の音を重ねることを言います。
ここでは『複数のKickを重ねる』という意味ですね。
シンセなどにもよく使われる方法です。

波形の始まり部分が一番大きいですが、その少し後ろに膨らみを与えると(レイヤーとして加えると)いい感じになります。

念のために書いておくと、ここで言う【いい感じ】はモリモトさんの感覚です。
もしかしたら、自分の感覚とはズレがあるかもしれません。
ですがKickのデザインに悩んでる方は、この感覚を真似してみることをおススメします。

SimplerのClassic再生モードでDecayやSustainをいじって好みの音にしていきます。

さらにエフェクトを挿し込んで音をデザインしましょう。
モリモトさんは【Saturator→Comp→いらない音をEQ Eightでカット→UtilityでGainを得る】という流れでデザインしていました。

モリモトさん曰く『ここでは完成形は目指さず、50%程度の完成度でOK』とのこと。

次にレイヤーとして重ねる音を選択しましょう。
モリモトさんは【Kick Analog 2】を選びました。

先に『少し後ろに膨らみを与える』と言っていましたが、909のKickにこのブーミー部分を足して『いい感じ』にするわけですね。

具体的には、Reverbで音を小さくして、Glue Compで音の伸びを得ます。

音の確認方法について、モリモトさんは『音の確認は、いつも使うヘッドフォンやイヤホンを使ってください』とのこと。
【いつも音楽を聴いている環境】で確認するのは重要ですからね。

さらに、迫力を得るためにDrum Bussを、音を馴染ませるためにGlue Compを入れます。

Drum Buss
Glue Compressor

再度、いらない高音と低音をEQでカットします。

Main Volumeを「-6dB」で抑えてるので、音にパンチを感じないかもしれません。
そのときはCompを使って硬い音にしましょう。

Compressor

ポイントのまとめ

Drum Buss

モリモトさんはDrum Bussが大好きだそうです。
『DecayでKick同士の粒の間にスペースを作ると、そこにBassを入れていくことが可能になるから』が、その理由。

お気に入りを作ろう

お気に入りを作ることも考えてみましょう。
1つお気に入りを作れると、そこから発展させられるので1から頭を抱えなくて済むようになるはずだからです。

作ったお気に入りは、後述のRISAさんの項に出てくるように【ユーザーライブラリ】を利用するのがおススメです。
プロジェクト(曲)を超えて、使うことが出来るので。

アイデアさえあれば

最初に書きましたが『アイデア次第』です。
重要なのは機材やプラグインではなく【アイデア】です。
高い機材が必ずしも必要というわけではなく、アイデアさえあれば、勝負できるはずです。

Beatportで上位に入ったモリモトさんが言うんですから、間違いありません。

On/Offのチェック

EQ Eightを岩のような形にして(Hi cut、Low cut)差し込んでおきます。

岩のようなEQ

一度Onにして曲を聴き、OffにしたときにちゃんとKickに迫力があるかを確認する用に入れているそうです。

Q&A

Q:Reverbの意味は?
A:
Kickの「ドン(Attack)」の後に「ウォン(ブーミー部分)」と来て欲しいところなので、輪郭を隠すのが狙い。
Reverbはテール部分を伸ばさず、その後のGlue CompでAtack1ms、Release遅めに設定し、Atackを立たせて、テールを活かすようにしている。
また、大箱で鳴らす機会があった時に、他のアーティストさんに目劣りしないように音作りしたいからというのも、その理由。

Q:作る際に、どういう環境で鳴らすかは考えている?
A:
作る以上は、レーベルに合わせて作り替えたりしている

Q:Masterトラック(Live 12ではMainトラック)に何かを差している?
A:
-6dBのためにLimiterを入れている。
普段は+3dBにしているが、納品時は-6dBを欲しがられるので、-3dBにしてエクスポートする

Q:曲を作るときにテーマやイメージはする?
A:
Kickを重ねていじっている間にイメージが生まれてくる感じ

Q:自分の中で、この曲はコレがメイン、というのはある?
A:
個人的に、全体像はKick、それにちょっとしたキャラクターを乗せるという意味でメロディやVoiceサンプルを使うのかどうか。加えて、レーベルごとに作り分けたりする

Q:CompとDrum Bussの順番は?
A:
順番を入れ替える実験はする。好奇心を解決していく

Q:Kickの出来の判断は?
A:
Spectrumの助けを借りる。レファレンスとなるKickを流して、自分が作ったKickと比べる

akimの一言

テクノだとKickはかなり重要な位置を占めますよね。
もちろん他のジャンルにおいてもKickは重要ですが、テクノは特に重要ですよね。

それゆえか『Kickは、サードパーティー製のプラグインが必須』みたいに思い込んでいる人も少なくないかと。
プラグインが悪いわけではないんですが、Live純正のエフェクト等でこれだけの音を作り上げられるというのも事実です。

説得力、ありますよね。
モリモトさんはBeatportで上位に入ってるんですから。

さらに、以下のようなポストに出会えることもあるので、SNSは要チェックです。

モリモトさんの情報はこちらから

岡本剛 / Tsuyoshi Okamoto「アレンジャー目線の低音処理方法」

2人目はAbleton認定トレーナーでもある【岡本剛】さん。

完全な余談です。
岡本さんの名前の読みは【ツヨシ】なんですが【岡本隆司(オカモトタカシ)】という同姓かつ似た雰囲気の名前のAbleton認定トレーナーもいるために、間違いを防ぐべくAbleton認定トレーナーの間では【ゴウ君】と呼ばれてたりします。

Ableton Liveが入ったPC1台でプレゼン開始です。

岡本剛はコンポーザー/アレンジャー/ギタリストとして、多数のアーティスト(Aimer/Kis My Ft2/OLDCODEX/VOYS BOY/ 元気ロケッツ etc) 、NHK をはじめとするメディアへの楽曲提供、BGM 制作を行っており、 ドライブ感のあるギター サウンドに定評があり業界内の信頼も厚い。日本最大級のDTM メディアサイト/ DTM レッスン・スクール Sleepfreaks にて講師も務める。

13 歳でギターを手にし、打ち込みにも目覚めたことが後のAbleton Liveとの出会いにつながった。

10 年に渡るバンド活動と渡英を経て、作編曲家として本格的に活動を開始。

多数のメジャーアーティストの作編曲、 NHK 「アフリカ縦断 114 日の旅」同3 シリーズの劇伴、ゲーム、アプリ、コンサート BGM 制作まで幅広く活動しており、TOKYO BEDROOM MUSIC 名義での発信も行っている。

<<Recent works>>
スタジオポノック『屋根裏のラジャー』 劇伴(一部)
BS-TBS木曜ドラマ23『夫婦の秘密』劇伴(一部)
六本木サイネージ広告 ショートムービーBGM(全6バージョン)

低音を聞こえるようにしよう

『低音の処理は難しい』と、よく言われます。
では、なぜ難しいのでしょう?

岡本さんの答えは『実態をつかみづらいから≒聞こえづらいから』。
解決するために『実態をつかもう≒聞こえるようにしよう』という方法を取ります。

低音を聞こえるようにするための方法として

  1. モニタリング環境
  2. アナライザーとEQ

を岡本さんは挙げました。

モニタリング環境

こと、低音に関しては日本の住環境などを考えるとヘッドフォンが岡本さんのおススメ。

ただしSONYの定番モデルはオススメできないとのこと。
理由は『古いモデルなので、現代の低音域は再生しづらい』から。
とは言え全否定ではなく『ノイズチェックには向いているので、使い分けがオススメ』だそうです。

SONY MDR-CD900STは、世界最先端技術を誇るソニーと、洗練・熟知された音創りの感性とノウハウを持つソニー・ミュージックエンタテインメントとの共同開発によって生み出された完全プロフェッショナル仕様のスタジオモニターヘッドホンです。

アナライザーとEQ

EQ Eightで低域(150Hz以下)以外をバッサリとカットします。

EQ Eightでカット

さらに、Fab FilterのPro Q3を使います。
理由は【ここから高音は通さない】という設定を使えるから。
以下の画像のようにバッサリとカット出来るんですね。

Fab FilterのPro Q3
FabFilter Pro-Q 4 - Equalizer Plug-In
FabFilter Pro-Q 4 is a high quality equalizer plug-in with unrivalled sound and interface. Available in VST, VST3, AU, C...

Mixで大変なのが【低音の量】なので、お手本となるレファレンスを参考にします。
レファレンスと自分の曲を聴き比べて近づけていくわけですが、耳だけではなく目も使いましょう。

アナライザーを使えば、低音部分の音量を目でも比べることが出来ます。
Liveにも純正のスペクトラムアナライザーは用意されてますが、岡本さんは【Voxengo SPAN】を使用してましたね。

Voxengo SPAN
Voxengo SPAN - Free Spectrum Analyzer Plugin VST, AU, AAX
Free Real-time FFT frequency spectrum analyzer plugin. A lot of options for visual look customization. Features statisti...

シンセ素材と生素材

シンセ素材、つまり合成で作られた音と、空気感が入っている生素材では、扱いが少し変わります。
空気感の有無は、かなり重要です。

『VoとSynth Bass』、『VoとAcoustic Kick』で聴いてみましょう。
それぞれ『生とシンセ』と『生と生』ですよね。
空気感などを聴き比べてみてください。

岡本さんは、ここからKickのレイヤーを作りました。
『生Kickと909Kickを合わせたものだといい感じになる』とのことで、

  • 909→そのまま
  • Aco Kick→Compなどで処理もするが、EQで低域をカット。役割分担で、低域以上をもらう。さらに音をタイトにするためGateをかける

という手順を踏みました。

Q&A

Q:BassとKickの棲み分けは?
A:
Bassは音程は動くが、Kickは一定。アナライザーでKickの周波数を確認して、Kickが60HzならそこはKickに譲ってBassはその上を担う。クラブものだとサイドチェーンを入れるのもあり。聴感上わからないように入れることもあるし、がっつり入れることもある。

ここでKOYASさんから補足が。
曰く『硬いKickには柔らかいBa、柔らかいKickには硬いBa。』だそうで。
【反対の特性を持つ音を合わせる】ってことですね。

Q:オススメのヘッドフォンは?
A:
YAMAHAのHPHーMT8。

YAMAHAスタジオモニターヘッドホンのリファレンスモデルHPH-MT8は、プロ用モニタースピーカー等で培ってきた技術を注ぎ込んだヘッドホン。「すべての音を、見るために」をテーマに、低音から高音まですべての帯域をバランス良くフラットに再生し、忠実な原音再生を徹底的に追求

KOYASさんとHATAさんからは『DJだとゼンハイザーのHD25が人気』という補足アリ。

大人気「HD25-1 II」のニューパッケージング・バージョンです。ステレオ標準変換プラグのみが付属するシンプルな構成のモデルです。

Q:Pro Q3に似たやつは?
A:
新定番のEQと言われているものがある。内容的にはPro Q3の上位互換で【Three-Body TECH Kirchhoff-EQ】というもの

【Kirchhoff】の読みは【キルヒホフ】だそうです。

Three-Body Technology Kirchhoff-EQ
The ultimate digital EQ plugin, with every feature you’ll ever need. Dynamics processing, vintage models, selectable pha...

Q:上音を重ねると違和感を感じることがあって、その際はローカットで対応します。クラブミュージックばかり作ってるので、他ジャンルだとどうなのか知りたいのですが?
A:
クラブはドンシャリなので、中音域が空いてる状態でどう聴かせるか。
ロックだと中音域に固まるので、どう整理するかが腕。
上音を重ねて違和感を感じる場合はEQ処理よりも、アレンジを見直すことが自身は多い。Mixよりもアレンジで対応した方が、いい結果を得られることが経験上では多いから

Q:楽器のOn/Off(ローカットするとらしさが失われる時)はどうする?
A:
オートメーションでOn/Offを切り替える。マルチバンドコンプで低域だけを抑えたりすると、うまくまとまるかも?

akimの一言

Q&Aを見てて思ったんですが、みなさん本当に低音の処理には苦労させられてるようで。
岡本さんのプレゼンから何かしらのキッカケを得られていることを願います。

低音域の処理って好みやジャンルや音楽性にもよりますから、狙い通りに仕上げられるようになるのが一番美味しいですよね。

そして、前回のAMTと今回のAMTで何度【Pro-Q3】と【Voxengo SPAN】を目にしたことやら。
定番と言われる理由がよくわかったような気がします。

今回のデモ音源や曲作りのプロセスは、動画として公開予定とのことなので、岡本さんのXをフォロー推奨!

岡本さんの情報はこちらから

RISA TANIGUCHI (CLR/Second State) 「フロア映えするテクノキック&ベースの作り方」

3人目は【RISA TANIGUCHI】さん。

以前、誰かが『その人の体格って、出す音に通じるものがあるんだよね』と言ってたのを記憶してるんですが、RISAさんにはその説は当てはまらないようで。
まさか、あんなゴリッゴリにゴツイ低音をぶちかますとは想像出来ませんでした。

ということで、その内側を少し覗かせてもらいましょう。
セットアップは、Live 12が入ったPC1台。

東京出身のDJ・プロデューサー。世界中を飛び回って培ったDJスキルと中毒性ある楽曲プロデュースセンスで、Chris Liebing、Amelie Lens、Charlotte de Witte、Radio Slaveといった、世界中のトップテクノプロデューサーから絶大な信頼を寄せられる数少ない日本人アーティストの一人。

2018年のデビューEP‘Ambush’ (Clash Lion) がBeatportのトップリリース5位を記録。収録曲がBBC Radio 1でプレイされたことでその名が一気に知られることとなった。また、同年Amelie Lensが世界中からデモトラックを募る企画で、約4,000の応募の中から自身のトラック”Emergency”が選出された(同曲は"Calling EP"としてレーベルSuaraよりリリース)。その後もPan-Pot主宰Second State、Dense & Pika主宰Kneaded Painsといったヨーロッパの名だたる主要テクノレーベルからも認められ、コンスタントにEPリリースを重ねている。

2022年には、Beatportが8名のみを選出して年間サポートを行う“BEATPORT NEXT”に選抜されたことでさらに知名度を上げ、同年にはPrinceの元エンジニアとしても知られるBlack Asteroidとのコラボレーションを敢行。Chris Liebingが主宰するドイツの最重要レーベルCLRより’Acid Flesh’EPがリリース。プロデューサーとして大きなマイルストーンとなった。2023年にはパンデミック後初のヨーロッパツアーおよびインドツアーを成功させ、カルト的な人気を誇る”HÖR BERLIN”でのパフォーマンスが40万回再生を記録。さらにMixmag Asiaの"20 female artists pushing the sounds of the Far Wast forward"に選出された。自身のトラックを武器に世界各国と国内ギグを交互に行うことで、独自のサウンドを国内外に届け続けている。

前置き

プレゼンを始める前にRISAさんから前置きが。

『DJを長くやった後に音楽制作を始めたので、感覚頼みで音楽制作をしています。座学をすっ飛ばして話をしますし、これが全てではなく「こういう方法もあるんだ!」程度でお付き合いください』とのこと…だったんですが、話が始まったら今すぐやってみたいTipsのオンパレード。

2曲を題材にプレゼン開始です。

1曲目

Risaさんにとってオーソドックスなパターンで作った曲が、この1曲目。
まず【Rumbling Bass】などでチュートリアル動画を探したそうです。

検索が上手くいかない場合は【Techno Rumble】などでも探してみてください。
Google検索って普段の検索内容によって結果に違いが出ますから、検索語句を変えるのは有効です。

ちなみに、僕が【Rumbling Bass】で検索した結果『進撃の巨人OPテーマ』だらけでした。
【Rumble Bass】で検索した結果は、Fenderのベースアンプ【Rumble】だらけでした。
って、そんなことはどうでもいいですね。

【Rumble】という単語には【(雷が)ゴロゴロ鳴る】という意味があります。
KickやBassが雷のように轟く音…をイメージすると、僕のようなRumble初心者は取っ付きやすいかもしれません。

さて、RISAさんはKickとBassをセットにして作り始めます。
『Kickだけ作ってから、ということはない』そうです。

このときにRISAさんが使うのが、プラグインの【PunchBox】。
『エフェクトを使わなくてもいい鳴りを出してくれる』のが、その理由。

PunchBox
PunchBOX
Bass Drum Synthesizer

とは言え、エフェクトをまったく使わないわけではなく『Kickを汚すことが多いので、歪みなどの温かみを足している』とのこと。
しかし、ただ足すのではなく、RISAさんのTipsが登場します。
それが【チェーンリストでDryとWetを作る】というもの。

Audio Effect Rackのチェーンリストを活用

チェーンリスト

akimからチェーンリストについて補足します。
【チェーンリスト】とは【Audio Effect Rack】で使えるエフェクト機能のことです。

基本として、トラックに挿入したエフェクトは直列接続になります。

Audio Effect Rackのチェーンリストにエフェクトを複数入れると、並列接続が可能になります。

並列接続なので、直列接続と音に違いが出るのは理解いただけるかと。
これが、チェーンリストの普通の使い方です。

RISAさんはエフェクトを入れたチェーンリストと、エフェクトを入れてないチェーンリストを作ります。
エフェクトを入れてないチェーンリストを作るには、右クリックで【チェーンを作成】からでOKです。

そして、それぞれを【Dry】【Wet】とし、インストゥルメント(ここではPunchBox)の原音(Dry)と、エフェクトを掛けた音(Wet)を混ぜて使うというのがこのTipsのキモですね。
言うなれば、1つのトラック内でセンド/リターンエフェクトを作るイメージです。
上の画像の【Dry】【Wet】には、そういう意味があるのです。

チェーンリストをもっと知りたい方は、僕の動画をお役に立てていただければ。

【Wet】となるエフェクトは、Overdrive。
PunchBox全体を歪ませるのではなく、DryとWetを合わせる感じで使います。

さらに、KickにはReverbをよく使うそうで、理由としては【大きい箱や野外で鳴らすときに活きてくる】から。
【頭で考えて入れているのではなく、経験や体感で入れている】とのことで、場数による経験値が高いからこそのTipsだとは思うんですが、真似してみる価値はありますね。

Spectrum

【Spectrumは必ずどのトラックにも入れ、Kickは40Hzが山になるようにしている】とのこと。

ここ何回かのAMTで、ホントによく見る画面ですね。
岡本さんはVoxengo SPANでしたが、RISAさんはAbleton純正のを使ってました。

Spectrumの画面

Bass

お次はBassを作ります。
曰く『AnalogのBasic Sub Sineはオススメ』。
『クラブで腹にくる音が欲しい時は、これを入れると決まる』んだとか。

音作りでは

  • Auto FilterでHi Cut
  • EQ Eightは60~70より下はバッサリカット
  • Spectrumで70くらいを出るように設定

してあげると、いわゆる今っぽい音になるという話も。

Mastering後の音を意識

前回のAMTは【ミックスダウン】の回だったので、Mainトラックのエフェクトについてもいくつか話が出ました。
原則として【Mastering段階に渡す際には-6.0dBの音源が求められる】というものがあるので、それに対応出来るようなTipsだったんですが、RISAさんの場合はちょっと違うようです。

何が違うかというと【Liveを起動したらすぐいい音で作り始められるようにしてある】という点。
具体的には【Mastering後の音で作り始められるようにしてある】とのこと。

もっと具体的に言うと、Mainトラックに

  • Multiband Compression
  • +8位のSaturator(歪ませる音が好きなので)

入れておくそうです。

完成形をイメージしながら作っていくタイプのようです。
人それぞれ、気持ちよく作るための環境ってあるもんですねぇ。

あ、当然ながら『リリースが決まったら、Mainトラック部分は作り直す』そうですよ。
【-6.0dBの音源】が求められますからね。

2曲目

上で【Analog】を使ったBassの話をしましたが【「Bassはシンセじゃなきゃダメ」ということはない】という話を2曲目でしてくれました。
なんと、ここでは【909のTom】でBassを作りました。
ちなみに『WavetableでKickを作ったりもする』そうで。

で、909のTomを【Roar】で思いっきり歪ませていくと、あら不思議。
ちゃんとBassっぽく聴こえます。

Roarの使い方の取っ掛かりが欲しい方、手前味噌ですが僕が作った動画を貼っておきますね。

重要なのは【フロアーの鳴りを聴きながら作っていくもの】とのこと。
これも場数が重要だとは思いますが、部屋でヘッドフォンだけを頼りに作っていくのはやっぱり難しいんだと思います。

Tipsだけを聞きかじってわかった気にならずに『書を捨てよ、町へ出よう』的な?

Q&A

Q:曲を作るときはレファレンスは使う?
A:
こういう音作りをしたい、という意味で使ってたこともある。このレーベルで出したい、というときなどの参考にしていた。
が、自分で作りたい音を作れるようになってからは、あまりやらない。

Q:Mainに差しているエフェクトは納品時は?
A:
すべて外す。他のトラックごとに歪みを足したり、など。Preマスターと聴き比べた時に違う感じがした時は、エンジニアさんが合わせてくれたりする

Q:Technoにおける、Bassの役割とは?
A:
Body Musicという言葉があるように、振動で踊っていたので、そういう役割かな、と。(振動だけではなく)音も聴いている。

僭越ながら、この質問は僕(akim)がしました。
【踊らせる】というのはBassistであればどのジャンルでも意識するところではあるけど、アプローチがかなり違うので勉強になりました。

Q:曲作りを続けられる秘訣的なことは?
A:
これがなかったら曲作りが続かなかったな、というのが【曲作りに目標を持つ】ということ。DJと違って面倒くさいことが多いので。

Q:プリセットは活用する?
A:
ガンガン使う。ユーザーライブラリにClipというフォルダを作っておいて、それを使う。MIDIクリップを入れるとインストゥルメントやエフェクトごと使い回せるので。

Liveのユーザーライブラリ内に【Clips】というフォルダがありまして。
自分でフォルダを増やすことも出来まして。
ユーザーライブラリはプロジェクトを超えて、つまりA曲を作ったときにイイ感じだったフレーズやエフェクトなんかをB曲でもC曲でも使えるフォルダなのです。
ドラッグ&ドロップで出し入れ可能なので、深く考えずに使ってみることをおススメします。

Q:歌もののBassにテクノっぽさを足すには?
A:
シンプルなベースラインを繰り返すと、テクノっぽさが生まれる。CとC#だけで作ったりする。

KOYASさんから補足で。
【ジャンル的なことを言うと、動き回るベースラインはダサいと言う風潮はある】とのこと。

Q:ヨーロッパで注目しているDJやプロデューサーを教えて?
A:
トルコの『Yigitoglu』と『UFO95』。

紹介してくれたお2人の情報が得られるページを貼っておきますね。

Yigitoglu

UFO95

YigitogluさんとRISAさんのコラボ

YigitogluさんとRISAさんのコラボ曲もあるので、そちらのリンクも貼っておきます。
ぜひぜひ、チェックを!

Risa Taniguchi, Yigitoglu - Deep Focus [Octopus Recordings] | Music & Downloads on Beatport
"Risa Taniguchi, Yigitoglu - Deep Focus " | Find the latest releases here | #1 source for DJ Sets and more

akimの一言

『感覚頼みで制作をしています』で始まったプレゼンですが、終わってみれば『感覚を突き詰めるスゴさ』みたいなのを味わった気がします。
自分の目の前にある曲に対して試行錯誤を繰り返して、自分が出したい音を突き詰めていったんだろうなぁ…なんて、勝手な推測をしてみたり。

個人的には『Mastering後の音を意識して制作』というのが面白かったですね。
僕の場合、今作っているトラックの音にばかり集中することが多いんですよね。
それは悪いことばかりじゃないんでしょうけど最終的には完成させるわけだから、ちょっと先を見据えつつ各トラックの音作りをするのもアリなのかも?と思わせてくれました。

RISAさんのSNSとかを、貼っておきますね。

RISAさんの情報はこちらから

まとめ

ということで、今回のAMTも盛況のうちに終了です。

今回はTechno寄りの話が多かった気もしますが、応用が利きそうなTipsが多かったですね。
ジャンルによって好みはあれど、いいものはいいですからね。
いい曲を生み出すためのTipsはジャンルを超えて通じるものがある…って感じでしょうか。

『次回のAbleton Meetup Tokyoも楽しみ!』という方は、AMT公式のアカウントをフォローしておいてくださいね。

って、その前にAMTパーティーもあるんですよ。
今まで忘年会という名目で開いてたんですが『もっと気楽に繋がろうよ』的な感じです。
そちらも含め、フォロー推奨です。

ちなみに、そのパーティーには僕も出演します。
Ableton Liveで音を出しながら、愛器の5弦Bassをバチバチと弾く予定です。

Next Party | Ableton Meetup Tokyo Early Summer Party - Ableton Meetup Tokyo
Ableton Meetup Tokyo の Next Party | Ableton Meetup Tokyo Early Summer Party ページです。

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