Push(世代的には Push 1)が世に出た時、衝撃でした。
Ableton Live + Pushという環境での楽曲制作のスピードが格段に速くなったのを記憶しています。
では、今回出たPush(世代的には Push 3)はどんな感じでしょう??
BassistでありAbleton認定トレーナーであるakimが愛用している機材を紹介するカテゴリー。
機材って安くはないから、導入前に情報収集は必須だと思います。
その情報収集に一役買えれば。
Push 1, 2, 3
Pushの表記
まず。
新しいPushの正式名称は【Push】ですが、ここでは便宜上【Push 3】と書きます。
初代のPushは【Push 1】、2代目は【Push 2】とします。
Push 1
初代のPushですね。
個人的な話ですが、これを導入したことでLiveでの楽曲制作フローが一変したのを覚えています。
Push 1で提示された
- 64パッドでセッションビューのコントロール
- 64パッドでインストゥルメントを演奏
- ディスプレイにパラメーター情報が表示
- 周囲のボタンやツマミ(エンコーダー)でLiveの機能に直接アクセス
という設計思想はPush 3にも引き継がれています。
Push 3ではこれらがすべてレベルアップしている、つまり楽曲制作が『より速く』『スムーズに』『音楽的に』出来るようになっていると思ってください。
(詳しくはPush 3の項で書きますね)
Push 1ユーザーがPush 3を導入したとしましょう。
ボタンの配置や操作方法(Shiftボタンを押しながら、など)で戸惑うことはあるかもしれませんが、64パッドと周囲のボタンやツマミで操作や演奏をするのは変わりません。
つまり、改めて1から操作を覚える必要はないので、操作方法に惑わされず制作に集中できるようになるまで長くはかからないはずです。
何より『この操作はPushからじゃなくてPCからなのね』ということがPush 1に比べ、格段に減っています。
Push 2
Push 1からPush 2への一番の進化は【ディスプレイ】でしょうか。
ドットディスプレイから高解像度のRGBディスプレイへと進化したのは大きな驚きでした。
そのディスプレイには選択したオーディオクリップなども表示され、もろもろの編集が素早く直感的に行えるようになりました。
また、エフェクトのパラメーターなどはPCよりもPush 2での方が視覚的・感覚的にわかりやすくなりました。
ファームウェアアップデートも重ねられ、Live 10で登場した機能【キャプチャ】にも対応しました。
Push 2からPush 3への乗り換えは、Push 1からのそれよりもずっとスムーズだと思います。
(僕も言ってしまえばPush 2からの乗り換え組ですからね)
機能的な面で大きく進化しているとはいえ、基本の設計思想は変わってませんから。
慣れるまでは「?」となりそうなのは、文字ではなくアイコン表示されるようになったボタンですかね。
あと、配置変更とね。
Push 3
ということで、Push 3。
大きな進化は
- スタンドアロン版とコントローラー版を選べる
- オーディオインターフェイス
- ヘッドフォン出力
- MIDI In / Out端子
- USB-A端子
- MPE対応パッド
- ADAT オプティカル入出力端子
- CV/GATE信号送信
と言ったところでしょうかね。
そのほか、ジョグダイヤルが追加されたり、パッドが薄く押し心地がいいものになったり、ボタンの配置場所が変わったりしています。
平たく言うと【音楽制作や音楽活動の中心にPushを!】といったところでしょうか。
制作だけではなく、ライブパフォーマンスなどの場合にも活躍するってことですね。
もちろん今までもそうだったんですが、活躍できる場面が増えたということです。
ということで、それぞれの進化などについて掘り下げていきましょうか。
Push 3の魅力
スタンドアロン版とコントローラー版
スタンドアロン版
単体で動作する機械のことを【スタンドアロン】と呼びます。
Push 3では文字通り【単体で】動くバージョンもラインナップされました。
プロセッサー(CPUのこと。スタンドアロン版Pushの場合はLinux)と、記憶媒体としてSSDが入ってるので文字通りPushだけで制作もライブも出来ます。
PCとPushが同じWi-Fiネットワーク内にいるのであればLinkでもつながれますし、Live SetをWi-Fi経由で送ることも出来ます。
Liveが入ったPCもいらないし、オーディオインターフェイス搭載になったので楽器や声も直接Recすることも出来ます。
バッテリー内蔵なので電源が無い場所でも制作したり、ライブしたりも可能です。
コントローラー版
Push 1や2と同様にPCにつなげて使うのがコントローラー版です。
プロセッサーやSSD、Wi-Fi機能は入ってません。
だからと言ってスタンドアロン版に劣っているわけではありません。
むしろ『制作部屋からPushを持ち出すこと?たぶん無いんじゃないかなぁ』ってタイプにはコントローラー版の方がおススメです。
もし『スタンドアロン版にしておけば良かった…』って後悔が出ちゃったら、そのときはアップグレードキットを使いましょう。
ドライバー一本でスタンドアロン版に変身させられるキットが2023年内に発売開始予定です。
オーディオインターフェイス
オーディオIn
2つのオーディオIn端子が搭載されました。
これでGtやBa、マイクなんかも接続出来ます。
ただし、フォーン端子なので電源を必要とするコンデンサーマイクなどXLR端子のものは接続出来ません。
オーディオOut
オーディオOut端子も2つ搭載されました。
Pushから直接モニタースピーカーやミキサーなどへ音を送ることが出来ます。
ヘッドフォン出力
Pushから直接ヘッドフォンで音を聴くことも出来ます。
ヘッドフォン端子は6.3mmのものなので、イヤフォンを使いたい場合は変換アダプターが必要になるかな。
MIDI In / Out端子
3.5mmのブレイクアウトケーブルを介したMIDI入出力が可能になりました。
USB-A端子
PushにMIDI機器をつなぐためのUSB-A端子が搭載されました。
つまりPushにLaunch PadのようなMIDI機器をつないで操作することが出来るようになったということです。
この辺、面白い使い方が出来そうなんですよねぇ。
愛用のフットスイッチなどをつないでの実験を計画してます。
MPE対応パッド
『MPE対応ハードウェアって、インストゥルメント側との相性もあるんですよ』という話を小耳にはさんだことがあります。
つまり、AというMPE対応機種とaというMPE対応インストゥルメントの相性がいいからと言って、AでbというMPE対応インストゥルメントを上手く扱えるのかというと必ずしもそうではなく…。
では、PushとLiveの相性はと言えば。
そりゃもう、最高でしょうねぇw
ADAT オプティカル入出力端子
ADATとは【米ALESIS社が開発したデジタルオーディオ転送技術、および製品名】です。
この【デジタルオーディオ転送技術】ってのが【1本のケーブルで8チャンネルを送れる】というもの。
この技術に対応した入出力端子が搭載された、ということですね。
ADAT対応機器を持っている方なら嬉しいことかと。
CV/GATE信号送信
Pushのフットスイッチ(ペダル)端子からCVやゲート信号を送ることが出来ます。
これでモジュラーや外部シンセを操れるようになったわけですが、この辺は僕の得意分野ではないのでAbleton Meetup Tokyoの動画を観てもらった方が早いかな、と。
もちろん、従来通りにペダルをつなぐのもまったくもって問題無しです。
ちょっとした注意点
Liveのバージョン
Push 3を楽しむためには【Live 11.3.2以降】が必須です。
Live 10以前をお使いの場合はLive 11へのアップグレードを、Live 11を使ってるけどアップデートしてない場合はLive 11.3.2以降へのアップデートを行う必要があります。
Push 3が不安定?
お使いの環境にもよるはずですが、トラックセレクトボタン(ディスプレイ直下の長方形ボタン)を押してもLive側で認識しないことがあるかもしれません。
(僕は最初、この状況になりました)
その場合は、Liveの環境設定画面の(Win:Ctrl + , / Mac:Cmd + ,)Link/Tempo/MIDIのタブを開きます。
コントロールサーフェスを【Push】、入力を【FromPush】、出力を【ToPush】に設定してください。
これでPush 3が気持ちよく動くようになるはずです。
あるいは接続したときにオーディオインターフェイスの入出力設定が使用中のものからPushに置き換わる場合もあります。
そのときも同様に環境設定から設定を変えればOKです。
また、Liveはアップデートが随時なされます。
このアップデートにはPushのためのバグフィックスも含まれているので、自動アップデートがおススメですね。
USB-Cで接続
Push 3とPCとの接続は【USB-C】から【USB-C】です。
PC側にUSB-C端子の空きがあるか、確認した方がいいかもですね。
ついでに言うと、USB-CをUSB-Aに変換するアダプタにはご注意を。
特に怪しいのを使っちゃうと、場合によっては機器の損傷などのエライことになりかねないです…
USBケーブル
Push 3にはPCとの接続用にUSBケーブルが同梱されてます。
が、実はこのケーブル、ちょっと短めで1mほどです。
作業環境によってはPush 3の配置場所に頭を悩ませるかもしれません。
では市販のケーブルでもOKかと言うとそうでもなく、Abletonショップページからの購入が推奨されてます。
どこで買う?
Ableton公式サイト
1ユーザーとしてはいろんな楽器屋さんで触って買える機会が増えるといいなと思うんですが、2023年7月現在はAbleton公式サイトからのみです。
触りたいなら…
ネットでの買い物が普通になってきたとはいえ、やはり『さわってから買うかどうかを決めたい』って方はいると思うんですよね。
そういう方はAbleton公式のお知らせをチェックするか、お住まいのエリアのユーザーグループなどをチェックすると、Pushに触れるイベントなどが見つかるかもしれません。
触らなくても…
変な言い方ですがLiveで曲を作る、あるいはLiveでライブパフォーマンスをするというタイプであればPushは必ず役に立ちます。
GtやBaなどであれば個体差があるので楽器屋さんとかで触りたい気持ちもよくわかりますが、Pushは個体差があるわけではないのでネットでポチッとで問題無い…と思います。
というか『買おうかな。どうしようかな』という段階なのであれば、触ったあとでは『いつ買おう』に変わるだけだったりします。
ってことは、さっさとポチッた方が手元に届くのが早くなるので、楽曲制作にはそっちの方が有利かもしれませんねww
動画
この記事では動画を作ってませんが、僕がやってる【Ableton Live講座】ではPush編をやってます。
Push 3に関する動画も随時アップしていく予定なので、そちらの方もチェックしていただけると嬉しいです。
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